木俣氏インタビュー

森林セラピーの推進に携わり、森林セラピー実行委員会事務局である「社団法人 国土緑化推進機構 情報・普及部」の木俣知大さんに森林セラピーについてお話をお聞きしました。



- 森林セラピーについて、教えていただけませんか。
森林セラピーは、これまでの「森林浴」のように、ただ森に入ると「なんとなる心地良い」という受身のスタイルだけではなく、呼吸法やノルディックウォーキングを取り入れることで積極的にリフレッシュや運動を行うことで、楽しみながらこころと身体の健康づくりに森林を活かしていこう、という取り組みです。
詳しくは、Webサイト「森林セラピーポ-タル」でご覧いただけます。
- 森林セラピーポータルは、とても分かりやすく森林セラピーを知ることができるサイトですね。木俣さんが所属されている国土緑化推進機構はどのようなところなのですか。
先日北海道でも開催された「全国植樹祭」や「全国育樹祭」を通した森林づくりの普及啓蒙を行うとともに、春の風物詩ともなっている「緑の募金」等によって、子どもたちや市民、そして企業等による植林や下草刈り、間伐などの森林ボランティア活動を支援しております。

森林ボランティア活動には、実際に荒れ果てた森に入って保全活動を行う「汗のボランディア」、子どもたちに森林環境教育を行ったりアイディアを提供する「知恵のボランティア」、そしてなかなか現場での活動はできないものの、上記の活動を行っている人を募金を通して応援する「寄付のボランティア」と3つのスタイルがあります。

そして、これらを繋ぎ合わせることで、国民全体で森林を守り育て、次世代に豊かな森林を引き継ぎ、森林と共生する社会づくりを進めていくことを目指しています。
- 木俣さんが森林の保全活動に関わり始めたきっかけ教えてください。
国土緑化推進機構に入ったのは、もともと大学・大学院で森林や環境について学ぶとともに、大学院卒業後には森林NPOに就職して現場に身をおきながら実践活動を取組んでいたことが経緯としてありますが、子どもの頃から、両親に森林に連れ行ってもらったり、中学の頃から森林の中を走るスポーツをやっていたことが影響していると思います。

ちょうど1980年代後半は、林業が低迷することで森林の手入れが遅れていた上に、各地で台風や大雪といった自然災害を受けることで、足を運んだ各地の森林で、樹木がなぎ倒される被害を受けて荒れ果てている現状を目の当たりにし、森林の荒廃を実感していました。

私たちの暮らしは、地球温暖化防止や水源涵養といったさまざまな森林の恩恵のもと成り立っているにも関わらず、私たちの多くはそれを忘れ去られ、かつては生活に密着して、巧みに森林を守りながら活かしてきた、我が国の伝統的な文化が今、失われようとしています。

そこで、国土緑化推進機構では、幅広い国民の方々との関係性が強い「健康」をキーワードとした森林セラピーの推進を通して、新たな現代的な森と人が共生する新たな関係性を再構築することで、「森と人が共生する社会」づくりを進めていきたいと思っています。
- 森林セラピーポータルでは、森林セラピーができる場所が紹介されておりますが、お勧めスポットがありましたら、教えていただけませんか。
各地の「森林セラピー基地」「セラピーロード」は、地域毎に自然的・文化的な特色を有しており、一方で来訪者の方々も、個々人の嗜好性やその時の気持ち、あるいは利用目的によって、最も適した場所というのは異なってきますので、一概に万人にとって「どこが良い」とは言えません。

つまり、来訪者自身で、身体の健康づくりのために、楽しみながら運動をしながら、旬の新鮮な食材を生かしたヘルシーな食事をとりたい、などといった目的を明確にしていただけると、体力や体調等を踏まえて、それに適したコースのある森林を選ぶことができます。

また、森林の様相も、同じ針葉樹林でも上松町の赤沢自然休養林の様な渓流沿いに拡がる天然ヒノキが神々しく立ち並ぶ森林もあれば、信濃町のように高原地帯に開放的に拡がるスギ林もあります。また、飯山市のブナ林のように、人里の近くにあるブナ林もあれば、奥地の鬱蒼としたブナ林もありますが、どの森林が最も自分が心地よく感じるかは個々人で異なりますし、その時の心境によっても異なってきますので、それらを踏まえて一番良い森林を選んで頂くと良いと思います。

なお、各地で様々な形での「森林セラピー」の取り組みをサポートする興味深い取り組みが各地で始まっています。 長野県の信濃町では、企業や健康権組合と森林セラピープログラムや「癒しの森の宿」の保養契約・協定等の締結に着手しており、企業の従業員やその家族の心と身体の健康づくりのサポートを開始しています。宿泊施設では、ハーブティーやアロマテラピーによるおもてなしや、朝採り野菜などの旬の食材を活かしたヘルシーメニューが提供され、森林で癒されるだけでなく宿泊施設でも存分にリラックスしていただける環境を用意しています。

また、上松町では、県立木曽病院と連携して健康診断や人間ドックと森林セラピーを一体的に提供する「森林セラピードッグ」や、医師が赤沢自然休養林に訪問して健康相談に対応する「森のお医者さん」などの取り組みも着手しており、医師のアドバイスの元で森を歩くという取り組みが本格化しています。

「信州・信濃町」の御鹿池(黒姫童話の森)コース
「山形県・小国町」の主要セラピーロード

- 従業員のストレスケアの1つとして、関心を持つ企業が今後さらに増えそうですね。
森林セラピーは治療行為ではなく、近年メタボリックシンドロームやメンタルヘルス不全等で問題が顕在化している、生活習慣等の改善を通して未然に防ぐ予防に基づく取り組みです。ドイツでは予防医療が成熟するとともに制度化されており、健康保険が適用されて保養地を訪問することが一般化しています。

我が国においても、豊かな森林を活かしてリフレッシュやレクリエーション的な要素を含めることで、楽しみながら日常生活の中に健康づくりが自然に取り込まれ、定着していくライフスタイルが拡がっていけば、と楽しみにしています。

特に、近年は測定機材が飛躍的に発展しているので、森林の中でも簡易的にストレスチェック等が行えるようになっていますので、是非科学的な効果の検証を担保しながら、森林セラピーを多くの皆さまに拡げていければ、と考えています。
- 森林セラピーは、まさに環境と人々のセルフメディケーションだと感じました。より多くの方に森林セラピーをお伝えしたいですね。

本日はお忙しいところありがとうございました。

社団法人 国土緑化推進機構 木俣知大氏