北海道はまだまだ寒いですが、内地はすっかり春めいてきました。本当は厳寒の頃に原稿を出すべきだったのですが、年度末進行で時間を取られっぱなしでなかなかつづきを書けずじまいでした。
さて、今回は前回のつづきということで、地域のデザイン、という話しに行こうと思うのですが、いくつか前提のお話も必要ということで、今日は特定非営利活動法人というちょっと変わった法人形態のお話をしたいと思います。
■で、法人ってなんなの?
皆さん色々な地域活動をしているかと思います。町内会や子ども会のような昔からある地域活動にせよ、防災会や子育てサークルのような新しい市民活動にせよ、いわゆる任意団体、という形式をとっていることが大変少なくありません。
ちなみに、個人が集まって、相互の信頼関係で自分たちの活動をやるわけですから、結社の自由ということが憲法で保障されている日本国内においてはいつでもそんな団体は簡単に作れます。当然、市民活動以外にも営利組織でも、祭祀団体でも作ることが出来るわけです。
ところが、ここでとても変なことが生じます。
なんと、その団体では、部屋も借りれず、代表が変わるたびに贈与だの相続だのの申請が必要になったりすることがあるのです。憲法を含めて法律と言うのは、人間に対して、義務と権利を定めたものであって、ただ人が集まった集団そのものに対して権利も義務も発生しません。
義務が発生しないのはまだしも、権利が発生しないととても困ったことが起こります。団体に対する、所有権が法律で規定されていませんから団体として、モノの所有が出来ません。で、便宜的に団体の代表がその所有者となります。で、団体の代表が変われば旧代表から新代表へ、資産やモノの譲渡が発生するわけです。高額であれば譲渡税が発生するでしょうし、旧代表の死亡による代表変更であれば、相続税も発生しかねませんし、ひょっとするとその資産は一般の相続に組み込まれ、代表の家族に資産が移ってしまい団体の活動継続が危うくなる可能性があります。
で、そこで、法人というものが必要になります。文字通り、法で定めた人相当のもの、ということで法人となります。団体が一定の要件を満たせばそういう権利を与えるために別途人としての地位(人格)を与えるという仕掛けです。
■なんで、地域のデザインをするのに法人が必要なの?
で、地域デザインにおける法人の役割ですが、変な話、初めから必要なわけではありません。大体、地域の中で新しいことをするときに、いきなりそういう形があろうがなかろうがそんなに関係ありません。むしろ、今までのコラムの中の視点で、個々人の元気や幸せをどう作ったり引き出すかが重要になってきます。
しかしながら、先の13話で問題にしたように、その地域づくりのタネを地域の中に広げていくためには、地域住民が所属する会社は組織の方針や方向性が、一定期間の間きちんとその地域づくりのタネに向かっている必要性があります。
そこではじめて、法人であるということが重要になってきます。
地域内企業や地方自治体と手を携えないと結局のところ、地域の仲の人のリソース全体を幸せにしていくということが難しいことは先に述べました。そこで、そういうまちづくりの種になるチームと、そういう企業や自治体の間で約束を結んだりする形で、色々動いてもらう必要性が生まれます。で、往々にして、そのチームが任意団体であれば、その約束事は一般に「協定書」という形で、いわゆる、口約束レベルでのみ縛られることになります。
ところが、一般に、この協定書には法的拘束力はありません。なぜか。任意団体は人格が無いので、権利義務主体になれないから、権利(やってもらえること)と義務(やってあげること)の関係を書いてある書類の一切は無効とみなされるからです。ちなみに、一般に企業も地方自治体も法によって一定の人格が保障されていますので、ちゃんと法的拘束力を持とうとすると、代表名義で個人的契約書を交わすということにならざるを得ません。ところが、一般的に法人と言うのは、対個人に対しては雇用という形での関係での契約、もしくはお客様としての売買契約の対象でしかありませんので、なかなかそういう契約を結ぶ主体にはなりえません。
とすると、そのまちづくりのチームのほうも、一定の法人格を持って、きちんと協働の事業を設計し、契約を結んで進めていく必要があります。
詳しくは書けませんが、任意団体というスタイルの中で紳士協定を結び、いざというところで、こうした法的拘束がないことを逃げ口上に、企業や自治体側にはしごをはずされてしまった活動を数多く見てきています。私自身も、市民活動を支援する中でそうした経験で悔しいおもいをしたことも少なくありません。
地域の中の働くスタイルの大半が個人事業主であれば、そんな思いをしてまでことを進めなくてもいいのでしょうけど、多くの人が雇用されるという形で生きている以上、そういう雇用主である企業全体や自治体全体を動かさなくては、地域を形作っていくことは大変難しいのです。
■法人にはどんな種類があるの?
さて、どんな徒党にでも言われればなんでも人格を与えるというものではありません。当然法的に人格を与える以上、法にのっとって人格を得ることになります。で、へんな言い方をすれば、法で運営される国家にとって都合のいい徒党に対して、人格を与えて働かせようという話になります。
いろいろありますので、全部は取りあげませんが、たとえば皆様が一番見慣れている法人としては、多くの人の幸福に寄与するサービスとか商品を提供しながら営利を目的とする法人として「株式会社」ですとか、祭祀やご神体の存続を目的とした「宗教法人」ですとか、社会福祉の増進を目的として国では提供しきれない公益を提供するための「社会福祉法人」ですとか、会員の相互の福祉の増進とか経済的メリットを目的とした「生活協同組合」ですとか、上げるときりがないほどあります。
それぞれ、きちんと法的根拠と目的が、非常に明確に法律に書き込まれていて、それに基づいて法人格を法的に与えることになっています。それぞれの法を一度目を通してください。
ただ、法人となって契約主体になれるですとか、権利主体になれるということもありますが、日本国の人として、この世に生まれるわけですので、法的な人とはいっても義務はあります。当然、納税の義務は、個人法人限らず日本国に属する人である以上果たさねばなりません。その他にも、重要な義務として、自分自身が人としての構成をきちんと維持しているということを開示や報告することが義務づけられます。この義務に関しては選ぶ法人形態によって異なってきます。要は、その目的を達成するのに必要と思われる形式を備えることが要求されているのです。
自分のすすめたいまちづくり事業と、その事業を運用する体制を良く引きらべ、最適な法人格を選ぶことをオススメします。ただ、実際に、地域づくり、まちづくりのような活動に関しては、公益性があるため、自然と公益系の法人に傾きがちであり、さらに、公益系の法人と行っても行政に近い形での公益提供とは異なることが多いと思います。そうすると、自然に一つの法人形態が注目されます。
それが特定非営利活動法人になります。
■特定非営利活動法人って、どんな法人なの?
で、特定非営利活動法人ですが、一般にはNPOとかNPO法人と呼び習わされることが多いのですけど、個人的には、余り好きな呼び名ではなく、意地でもNPOを使うといわれるのであれば特定NPO法人というのがいいのかなと思います。どっちにせよ長い表記なので、以下では特非と書き表すことにします。
特非は特定非営利活動促進法という法律に基づいて与えられる法人格です。
ちなみに、NPOというのはいいふるされているので、細かな解説は抜きにしますが、基本的に営利を目的としないあらゆる活動をする団体をさします。営利を目的としなければ公益性を求めるわけでもないですし任意だろうがどんな法人格があろうがいいのです。で、特非は、そのような団体に対して一律に与えられる法人格というわけではありません。
あくまでも、法で定められている分野に関する活動で公益性があり団体の一定の要件を満たしたものに対して与えられます。いわば国のお役に立つ特定の非営利活動をする団体に与えられる法人格です。なので、特定の非営利を行っている団体、ということで、特定NPO法人という言い方のほうが相応しいというわけです。
とはいえ、実はその特定の幅が非常に広いのも、特非の特徴で、ほとんどの地域活性化の活動がその範疇に入ります。あと、形式上ではあるとはいえ、その法人格の認証は都道府県という地方レベルで行うという点でも、地域づくり、まちづくりの活動のための法人格に適しているといえます。
特非の特徴として、利潤は上げてもいいのですが、再分配を禁じているとか、給与をもらえる理事は理事全体の1/3であるとか、特定非営利活動の会計と利潤を確保する活動の会計の分離など、利潤に対する制約は少なからずあります。また、法人を維持する条件として、活動内容を公開したり、活動報告を毎月するなど手間暇がかかりますし、特非を利用した悪事も少なからずあったため、この法人格を持つことで世間的信用があがるということもまずありません。
それであっても、地域、地方の活性化事業をする上で法人格が必要であればこの法人格が有効なことは確かです。立ち上げたばかりの団体であったり、法人化していないのであれば、是非この法人格を検討してみてはいかがでしょうか。
■あなたの活動は特定非営利活動法人に向いていますか?
最後におまけですが、皆さんの活動が特非に向いているかどうかをチェックする10の質問を用意しました。お時間があるときにでも、お試し下さい。次回に、この辺の解説をしながら地域をデザインする事業体について考えていきましょう。
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あなたの事業は特定非営利活動法人に相応しいか?10の質問
1.あなたの事業がわが子のように可愛い
2.あなたの事業と私個人は一心同体ではない
3.あなたの事業は持っている備品が多い
4.あなたの事業に対する持ち出しが多い
5.あなたの事業で事務所を持ちたい
6.あなたの事業は100年後も存続するべきだ
7.あなたの事業は不特定多数のために実施されるべきだ
8.あなたの事業はより多くのスタッフを受け入れるべきだ
9.あなたの事業は寄付等の善意で実施されるべきだ
10.あなたの事業は行政や企業と一緒に実施されるべきだ
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それではまた来月。