さて、今回は空間に対する印象についてです。印象は人に対してだけではありません。以前にも書きましたが、私たちはいろいろな社会に住んでいます。社会に存在するということは、様々な空間に存在するということです。空間が存在しない場所はありません。人に出会うよりはるかに多くの確立で新しい空間と対面しているのです。
今いる場所はどんな印象でしょうか。住み慣れた家の中。学校。会社。電車や車の中。自分の部屋。旅行先。自然の中。建物の中。いろいろなところにいると思います。そこには、さまざまな印象があるでしょう。
いつもと同じ場所だと思っても、同じ空間はほとんど無いと言えます。自分の部屋でも、お天気や部屋の状態、自分の体調、においなど様々な要因によって、印象が変わってきているはずです。またその空間に対する印象は気分のよしあしにもかかわってくることがあります。そう考えると、空間の印象というのは、人間にとってとても重要なことなのです。
居心地の良い場所と思った気持ちのときは、その空間に良い印象をもっていると言えますし、また、気分もよくなります。良い印象を持った場所には、何度も通いたくなりませんか。自分の部屋を自分の居心地のよい状態にしようとするのも、良い印象を持っていたいということではないでしょうか?
逆になんとなくその場にいたくない場所は、印象が悪いといえます。以前旅行に行ったとき、なんか良い印象がもてないホテルがありました。そのホテルは薄暗くかびくさく、翌日外を見るとそこは墓地でした。この話は少し極端だとしても、ツアーに組み込まれていなければ、決して自分では選ばなかったホテルでしょう。もちろん2度と行きたいとは思いません。
では、良い印象の空間とはどんなところでしょうか。空間をデザインする重要な要素は、「色・形・素材・照明」だと考えられています。私はここに「香り」を付け加えて考えています。手つかずの自然の中以外は、その空間はなんらかの目的で誰かの手によって作られています。作り出すときに、この5つの要素を考えて作られているかいないかによっても印象は異なってきます。良い印象の空間というのは、この5要素がバランスよく整えられているところではないでしょうか。
ある会社を訪れたとします。まずその会社のビル、受付に入ることになります。そこで受ける第一印象は、その会社のイメージにもなってしまいます。良い印象を与えられれば、その会社のイメージもアップします。だから、会社の受付には、きれいな花が飾ってあったり、対応の良い受付の方がいたりするのです。では、その会社の会議室や洗面所が汚かったりしたらどうでしょう?せっかくよい印象を持っていたのに、表面だけの印象の良さなのだと感じるのではないでしょうか?そうなると、会社全体に奥行きがない気がしてしまいます。
私はよくホテルやデパートの洗面所を利用しますが、その場をみると、そこのホテルやデパートのお客様に対する姿勢がわかるような気がします。レストランも同様です。どんなに素敵なお食事をいただいても、洗面所が汚かったり変な臭いがしたりすると、レストラン全体の印象も悪くなり、もう一度来たいと思わなくなってしまします。以前訪れたレストランは、自然食にこだわりをもっていて、使っている野菜はすべて有機野菜。生産者の方の写真まで載せていました。しかしそこの洗面所では、安い芳香剤の臭いがしていたのです。しかも見えるところに置かれていました。自然にそこまでこだわって、お店の雰囲気もとても素敵だったのに、最後に芳香剤の香りでは、それまでの素晴らしい印象が安っぽく感じてしまいます。
「企業イメージ」という言葉があります。ここには、さまざまな要素が含まれると思いますが、企業の表の顔でもある職場の空間作りはとても大事です。隅々まで空間作りが施されている企業では、気持ちよく働けて、お客様に対してもよい印象をもってもらえるのではないでしょうか。つまり、良い印象の空間は、良い印象の人を作り出す要因にもなると私は考えています。
最近の人材派遣会社の求人では、「きれいなオフィス」という文字をよく見かけます。それは、多くの人がきれいな空間にいたいということを望み、また、きれいなオフィスの企業は、気持ちよく働ける環境であるということに結びついているからではないでしょうか?
数年前、デパートがお客様獲得のためにまず洗面所の改革を行いました。売り場など見えるところは、常日ごろからいろいろと考えられていますが、洗面所のような後ろの場所は、なかなか目が届きにくくなります。残念ながら男性のほうがどんな状態か知ることはできないのですが、客層のほとんどが女性というデパートでは、女性の洗面所の改革は大きな意味があったようです。ほんの少し、空間を変えるだけで売上にまで影響するということです。
「空間の印象」は、その場すべてのイメージにもつながります。印象というと、すぐに人に対してのことを思い浮かべますが、このように空間に対する印象もとても重要なのです。
空間は普段意識しないものだからこそ、大切に考えていきたいところではないでしょうか。
