管理者: 2008年7月アーカイブ

*かおりのもと*

 かおりは、様々なところに存在しています。では、そもそも「かおり」ってなんでしょうか?

 かおりは、揮発性の化学物質で、大気中を漂っています。この揮発性の物質は、有機化合物300万種のうち、約40万種類以上あるといわれています。

 ひとつのかおりは、ひとつの物質で構成されているのではなく、様々なにおい物質となる分子の混合によってできています。つまり、組み合わせによってかおりが変わるので、かおりは無限にあるということになります。

 さらにかおりは、自然に存在するものから、人間が作り出すものまで様々です。自然に存在するものは、植物や動物などが持つ天然の香りで、人間が作り出す香りには、合成香料があります。普段触れている空間のかおりは、自然の香りと合成香料が混ざりあっているといえるでしょう。

 動物性の天然香料としては、じゃ香(ムスク)、霊びょう香(シベット)、竜ぜん香(アンバーグリス)、海狸香(カストリウム)など数種が古くから香水の原料に用いられてきました。
植物性香料は、植物から採取されるかおり成分の有機化合物です。これを凝縮したものが、アロマテラピーで使用される「精油」となります。

 合成香料は、石油化学製品などを原料として各種の化学反応により合成されたものと、天然香料から利用価値が高い成分を単離した物があります。

 天然香料と合成香料を混合させて作られるものが、調合香料と呼ばれます。これは、食品やお化粧品などに使われ、私たちの生活に不可欠なものとなっています。

 ここでは、アロマテラピーに用いられる精油について書いてみましょう。アロマテラピーでは、100%天然の植物から採取される精油を使用します。天然香料でも、動物性のものは使用せず、また合成香料はいっさい使用しません。

 精油は、有効成分を高濃度に含有した揮発性の芳香物質です。各植物によって特有の香りと機能をもっています。

 植物にとっての精油は、第二代謝の産物で、植物の生命昨日に必須というものではありません。香りの歴史でも述べましたが、この代謝産物は、草食動物や昆虫の攻撃からの防御、細菌や真菌など微生物の攻撃からの防御、虫をひきつけ受粉させるため、植物自身の傷回復のためのエネルギー貯蔵、過酷な環境下での生存援助、水分調整の働きがあると考えられています。

 精油が合成され貯蔵される場所は、植物の種類によって異なります。一般に抽出される場所は、植物の花、葉、果皮、樹皮、根、種子、樹脂などです。精油は、植物によって数か所から抽出される場合があります。たとえば、オレンジなど、葉、花、果皮、枝の4か所から、それぞれ異なった精油が抽出されます。果皮から取れるものが、オレンジ。花から抽出されたものが、ネロリ。葉と枝から取れたものが、プチグレンと呼ばれる精油になります。このように、ひとつの植物からいくつもの精油が抽出される場合もあります。

これらのかおり成分が、私たちの生活に密着し、様々な働きをしています。

*かおりの歴史 2*

 「草に楽しむ」と書くと「薬」という字になります。これは、草=植物が人生を楽にしてくれるというところからきているといわれています。天然香料の原料となる香りを持つ植物が、古代から人々を楽にしてくれる薬として使われてきたのです。

 植物の香りを神からの授かり物として、祈りや病魔退散のために使われ、そのうち人間はその香りを持つ植物の薬効性に気づくようになりました。

 香料が薬として使用された一番古い記録は、メソポタミア文明の古代バビロニアで発見されています。ミイラの保存・防腐剤として、古代エジプト時代からミルラやシダーウッドなどが使われていました。「ミイラ」の語源は、「ミルラ」からきているという説もあります。いまでもエジプトから発見されるミイラの棺の蓋をあけると、ミルラの香りがすることがあります。
また、同じころから使用されていたフランキンセンス(乳香)は、古代ギリシャ時代から、医薬品・軟膏として使われていました。これは、アラビア半島のイエメンやオマーン、対岸のソマリアなどで自生する木の樹脂から抽出され、オマーンにある世界遺産「乳香の道(フランキンストレイル)」で交易の中心として用いられるほど貴重なものでした。

 ミルラ(没薬)とフランキンセンス(乳香)は、キリスト誕生の時に、東方三賢者によって金とともに贈られました。聖書には他にもたくさんの香料が登場します。ちょっと前に話題になった「ダ・ヴィンチコード」に出てくるマグダラのマリアは、キリストの足をとても高価なナルドの油で拭ったということが聖書にでてきます。

 インドの伝統医学として有名なアーユルヴェーダは、紀元前600年頃に確立したといわれ、植物を利用することで、体だけでなく心の不調にも用いられています。これはのちに、中国医学やギリシャ医学に多大な影響を与え、医学の元になったとも考えられています。紀元前100年ころ成立した中国最古の薬物書『神農本草経』には、365種の薬草とその薬効が記載され、1世紀頃にギリシャの医師が記した『ギリシャ本草:マテリアメディカ』には、600種以上の植物に関する記述があります。

 世界三大美女といわれる「クレオパトラ・楊貴妃・小野小町」も香りを愛していました。クレオパトラはバラを、楊貴妃は白檀(サンダルウッド)を、小野小町は芍薬を好んで使っていました。実はどれも沈静作用や保湿効果など、女性に有効な作用をもたらす植物だったのです。三大美女は女性とってとても大切な香りを知らず知らずに使っていたのですね。

 「ロミオとジュリエット」の毒薬、「真夏の世の夢」の惚れ薬なども、植物の持つ効用を利用したお話です。シェイクスピアの作品には、154種もの植物が登場します。シェイクスピアもまた植物の持つ効能を研究したひとりです。

 中世ヨーロッパでペストが大流行していたときに、フランスの皮革のなめし職人の住む地域はあまり被害を受けませんでした。これは、なめし職人がなめしの工程で香料をふんだんに使っていたからと考えられています。当時香料の取引をしていたイタリアの大貴族メディチ家は、ペストの流行をヒントに、香料を調合しそれを薬として販売し、今でも現存する世界最古の薬局、サンタ・マリア・ノヴェッラを作りました。英語の「薬medicine」は「メディチmedici」が語源になっているほどです。

 日本の言い伝えにも、植物の効用を利用したものがたくさんあります。冬至の柚子湯は、柚子の体を温めてくれる作用と精神を高揚させる効果を、風邪をひいたときの生姜湯は体を温め免疫力を高める作用を、桐ダンスは、桐の殺虫作用を利用しています。これも先人の知恵で、はっきりとそれぞれの効能が確立される以前から使用されてきているものです。

 このように、古代から天然の香料が薬として使われてきていましたが、化学の発展によって18世紀ころから化学薬品が主流になってしまいました。しかし、20世紀のフランスの化学者ルネ・モーリス・ガットフォセは、香水につかわれている多くの天然精油が、化学添加物よりも優れた防腐効果をもつことに気づき、研究を進めます。実験中に大やけどを負ったガットフォセは、とっさに近くにあったラベンダーの精油に手を入れたところ、痛みが治まり、やけどの跡も残りませんでした。そこでさらに研究をすすめ、天然精油がもつさまざまな効用を再発見し、「Aromatherapy」という言葉を作り出しました。「Aroma=香り+Therapy=治療」。日本では「芳香療法」と訳されますが、ここからアロマテラピーの研究開発が本格的に始まりました。

 植物の天然な香りを利用した「アロマテラピー」は、現在では医学・美容・薬品などの様々な分野に利用されています。

 ちなみに、「アロマテラピー」と「アロマセラピー」の違いは、「Aromatherapy」をフランス語読みするか、英語読みするかの違いです。「アロマテラピー」が日本に入ってきたのは、イギリスからといわれていますが、言葉を作り出したのはフランス人。ということで、日本では両方の発音が採用されてしまいました。どちらが正しいというわけではないので、好きなほうを使うのがよいと思います。

 現代社会では、世の中のあちらこちらに、香料が使用されています。食料品はもちろんのこと、化粧品、薬品などなど、あらゆる香りに囲まれた生活をしています。どの空間にいても、香りのない空間はありません。現代では、そのほとんどは化学合成香料によるものですが、香料製造技術がなかった時代の古代の人々は、香りを植物や動物から抽出し、いろいろな場面で使用していました。

 ここでは、植物からの香りについて書いていきたいと思います。アロマテラピーは植物から抽出される100%天然の精油というものを用います。動物から抽出される香りは、動物の生殖分泌物や体内の結石のようなものから抽出するために、抽出するのが大変であるうえ、近年では規制がかかっていたりしていて、一般に用いるのはとても大変です。

 植物の香りのもとは、植物の油胞という小さな袋にたくわえられます。油胞の場所は植物によって異なり、花や葉、枝や根、果実や樹脂など様々なところにあります。植物にとって香りの油胞は2次代謝物で単なる老廃物と言われていますが、この香りの油胞は様々な働きをしています。

 植物にとっての香りの働きには、昆虫や鳥類を引き寄せ、受粉したり種子を遠くに運んでもらったりする、誘引効果。匂いによって有害な昆虫や鳥類を避け、苦味によって摂食されることを防ぎ、カビや有害な菌が植物に発生するのを防ぐ、忌避効果。生存競争に勝つために、他の植物の種子の発芽や成長を止めたり抑えたりする、生存競争効果。汗のように精油を蒸発させて自分を冷却し、強い太陽の熱から身を守る働きをする、冷却効果などがあります。

 このようにもともと持っている植物の香りの効果が、人体に影響を与えていると考えられています。古代から植物の香りは様々な方法で使われてきましたが、時代とともに香りの使い方は変化してきました。それは、人間の文化の発達と関連しています。

 植物を人類が使用していたという一番古い発見は、1960年代前半アメリカのR.Solecki博士によってイラクの北部にあるシャニダール村の洞窟の発掘された、約6万年前の化石人類ネアンデルタール人の埋葬された墓から出土した、タチアオイという草花の花粉の跡といわれています。奥深い洞窟の中まで昆虫や風によって花粉が運ばれたとは考えにくいため、死を悼む人が死者に添えて埋葬したと推察された。この時代から植物を何らかの理由で人類が使用していたということでしょう。

 古代、香りは神からの授かりものと考えられていたようです。 原始人が火を使うようになったころ、なんらかの木や植物を燃やした際に、香りが漂うことに気づいたときから、匂いというものを用いるようになったのではないかと考えられています。香り=Perfume(パフューム)の語源は、ラテン語の「Per Fumum」(煙によって立ち昇る)からきているといわれています。香りが煙とともに天にのぼっていくことから、まず、神に捧げるために香りが使われたようです。

 香りの利用が歴史的に認められているのは、紀元前3000年ごろのメソポタミア文明の時代です。当時の粘土板に、世界最古といわれる薬の処方が発見されています。古代エジプトでは、神殿で乳香(フランキンセンス)や没薬(ミルラ)を焚いて神に捧げたといわれ、現存する壁画に香油の壷を神に捧げる人物が描かれています。パピルス文書には植物の香りの使用方法などが記されています。 そのころから、知らず知らずのうちにその香りのもつ成分による効能を使用していました。つまり、香りの歴史は植物療法の歴史でもあるのです。

次回は、実際にどのように植物の香りが使われてきたかについてです。

 今回からは、「かおり」について書いていきます。 ネイチャーテクノロジー社にとっても、「かおり」はとても重要なものであり、アロマテラピーにも、この「かおり」がなければ、話をすることができません。 では、なぜ「かおり」が人間にとって大切なのでしょうか?

 「かおり」は、鼻という器官に「におい成分」が刺激を与えることによって感じます。人間のもつ他の感覚と違い、嗅覚であるこの「かおり」を感じることは、好むと好まざるにかかわらず、刺激を与えてきます。この感じ方は、性別・人種・年齢・生活習慣など、さまざまな要因によって、異なります。しかし、実は「かおり」を感じることが重要なのではなく、「かおり」に含まれている「におい成分」が体内に取り込まれることが重要なのです。

 日本では、「かおり」をあらわす言葉がたくさんあります。
「香り」「薫り」「馨り」「匂い」「臭い」「匂う」「臭う」「嗅ぐ」などなど。 「香り」は花の香りなど、よいにおいに対して使われ、「薫り」は風薫るなど、感触をあらわし、「匂い」は良い香りに、「臭い」は臭気など嫌なものに対してつかわれています。これは、古代より日本人が様々な「かおり」に対して、表現を変えてきたという歴史があります。

 「におい」は、現在では、香りの分子が鼻を使って人間の嗅覚を刺激することをいいますが、学者によると、「におい」の「に」は、赤い染料または顔料につかわれた「丹」のことをいい、古語の「にほふ」の「ほ」は、「穂」のことで、穂とは、高く盛り上がった様、周囲より秀でた様をいい、「ほふ」は、動詞の活用家に使われているのだと述べています。

 『万葉集』第19には、 「春の苑 くれなゐにほふ 桃の花 した照る道に 出で立つをとめ」 というのがあります。この中の「紅におう」は、目に映る紅色の光景をあらわしています。

 浅尾芳之助著の『古文重要単語』によると、「にほふ」という古語の意味は、「香気を放つ」「よい香がする」の他に、「ほんのりと赤みを帯びている」「ほんのりと光が射す」「光を受けて一段と美しく見える」「照り輝く」「光沢があって美しい」「美しい色彩を表す」などの意で、その名詞の「にほひ」も、「ほんのりとした色」「色合」「はなやかさ」「美しさ」「光」「威勢」「活気」「趣」「風情」「刀の刃を研ぎあげたときの刃の膚に現れる模様」「鎧の縅の色が、上から下にしだいに薄くなっているもの」など、いろいろな意味を持ち、とても複雑な言葉です。

 「かおり」を表現する言葉がさまざまなのは、この複雑なところからきているのではないでしょうか。逆にいえば、さまざまな行動や表現を「にほふ」という言葉ひとつで表わしていたとも考えられます。その後、「にほふ」という言葉だけでは、表わしきれないために、表現が進化していったのでしょうか。

 もともと、「においを嗅ぐ」という行為は、動物の本能のひとつです。動物は、目でみたり耳できいたりするよりも早く、においを嗅ぐことによって、生命の判断を行っています。味方か敵か。食べられるか毒か。異性のにおい。天気のにおい。土のにおい。木々のにおい。あらゆるかおりを嗅ぐことによって、自分たちが生き残る道具として、かおりを使っています。

 しかし、人間は二足歩行を始めたときから、地面より鼻が遠くなり、視力に頼る部分が多くなっていくことによって、生命の判断のためにかおりをかぐことが少なくなってしまいました。そのため、人間の体の中でも、においをかぐ大切な器官である「鼻」はなかなか研究されず、2004年になって初めて嗅覚の解明により、ノーベル医学生理学賞を受賞することになります。それほど、嗅覚に対する研究が遅れていたのです。

 近代になってやっとその重要性の研究がはじめられた「かおり」ですが、その「かおり成分」を使用して人々に役立てていたことが、古代より東西問わず発見されています。では、どのように使われてきていたのでしょうか?

次回から、その辺について書いていきたいと思います。

 これまで、人や場所の印象に関して書いてきましたが、最終回の今回は、「香りと印象」について書いてみたいと思います。

 実は、「香り」の無い人、場所というのは存在しません。日本人は比較的体臭の少ない人種ですが、全く体臭のない人はいないでしょう。また、無臭剤を置いているから、この空間には、なんの匂いもないはず。と思っていても、実際には、なんらかの香りが存在しています。

 「香り」は、無意識のうちに私たちの体内に入りこんできます。これは、嗅覚という動物の持つ感覚の特徴でもあります。嗅覚は、動物の器官の中で本来一番発達しているものなのですが、人間は長い年月の間にその能力を衰退させてしまいました。匂いを嗅ぐということは、生死にかかわることです。たとえば、天敵が近づいてきた匂いだったり、天気の匂いであったり、食物が腐っているかどうかの判断だったりなど、自分の身を守るためにとても重要な行為です。しかし人間が2足歩行をはじめ、地面から鼻の位置が離れたころから、徐々にその機能が衰退したといわれています。

 機能が衰退したとはいえ、嗅覚はやはり自分の身を守る手段のひとつであったことにはかわりありません。そのためか、嗅覚は五感のなかで本能に一番近い器官だと言われています。最初に書きましたが、香りは自分が好むと好まざるにかかわらず、瞬時に体に入っていきます。その時点で一瞬にして本能と結びつき、自分で考える前に、その香りを、好きか嫌いか、安全かそうでないかなどを判断しています。

 つまり、香りは瞬時にして、その人、場所などの印象を決める要因になっているのです。見た目や話し方などを取り上げてきましたが、印象に対して実は一番重要なのは、「香り」なのかもしれません。

 無意識に感じる「香り」が、心地よく感じるか不快に感じるかは、人それぞれです。それは、男女、年齢、人種、育った環境などによって、同じ香りでも感じ方が異なるからです。つまり、自分にとって良い香りだと思っていても、他人にとったら不快な香りかもしれないのです。不快だと感じた瞬間に、その人や場所によい印象を抱かないかもしれません。

 たとえば、香水などどうでしょうか?確かにほのかに香る香水の香りは良い香りであり、その人を魅力的に演出することもあります。しかし、つけすぎた香水は周りの人を不快にすることがあります。食事の席などで、強い香水をつけた人がいると、食事そのものの香りが消され、そのときの食事の印象が、香水の香りになってしまうこともあります。また、洗面所の芳香剤の香りはどうでしょうか?ある会社を訪問したときに、入ったとたんに芳香剤の香りがしていると、その会社の印象が洗面所ということになってしまうかもしれません。

 このように、香りはその人やその場所の印象を瞬時に決めてしまいます。また、香りは記憶に深く結びついているといわれています。ある場所や人の香りが、違うところで同じ香りに触れたとき、その人や場所を思い出すことがあるでしょう。そういう意味でも、香りはとても重要な印象を残すことになります。

「印象」とは、「強く感じて心に残ったもの。感銘。対象が人間の精神に与えるすべての効果。」 「印象」とは、人間の五感全てを通じて感じるものなのです。

 さて、今回は空間に対する印象についてです。印象は人に対してだけではありません。以前にも書きましたが、私たちはいろいろな社会に住んでいます。社会に存在するということは、様々な空間に存在するということです。空間が存在しない場所はありません。人に出会うよりはるかに多くの確立で新しい空間と対面しているのです。

 今いる場所はどんな印象でしょうか。住み慣れた家の中。学校。会社。電車や車の中。自分の部屋。旅行先。自然の中。建物の中。いろいろなところにいると思います。そこには、さまざまな印象があるでしょう。

 いつもと同じ場所だと思っても、同じ空間はほとんど無いと言えます。自分の部屋でも、お天気や部屋の状態、自分の体調、においなど様々な要因によって、印象が変わってきているはずです。またその空間に対する印象は気分のよしあしにもかかわってくることがあります。そう考えると、空間の印象というのは、人間にとってとても重要なことなのです。

 居心地の良い場所と思った気持ちのときは、その空間に良い印象をもっていると言えますし、また、気分もよくなります。良い印象を持った場所には、何度も通いたくなりませんか。自分の部屋を自分の居心地のよい状態にしようとするのも、良い印象を持っていたいということではないでしょうか?

 逆になんとなくその場にいたくない場所は、印象が悪いといえます。以前旅行に行ったとき、なんか良い印象がもてないホテルがありました。そのホテルは薄暗くかびくさく、翌日外を見るとそこは墓地でした。この話は少し極端だとしても、ツアーに組み込まれていなければ、決して自分では選ばなかったホテルでしょう。もちろん2度と行きたいとは思いません。

 では、良い印象の空間とはどんなところでしょうか。空間をデザインする重要な要素は、「色・形・素材・照明」だと考えられています。私はここに「香り」を付け加えて考えています。手つかずの自然の中以外は、その空間はなんらかの目的で誰かの手によって作られています。作り出すときに、この5つの要素を考えて作られているかいないかによっても印象は異なってきます。良い印象の空間というのは、この5要素がバランスよく整えられているところではないでしょうか。

 ある会社を訪れたとします。まずその会社のビル、受付に入ることになります。そこで受ける第一印象は、その会社のイメージにもなってしまいます。良い印象を与えられれば、その会社のイメージもアップします。だから、会社の受付には、きれいな花が飾ってあったり、対応の良い受付の方がいたりするのです。では、その会社の会議室や洗面所が汚かったりしたらどうでしょう?せっかくよい印象を持っていたのに、表面だけの印象の良さなのだと感じるのではないでしょうか?そうなると、会社全体に奥行きがない気がしてしまいます。

 私はよくホテルやデパートの洗面所を利用しますが、その場をみると、そこのホテルやデパートのお客様に対する姿勢がわかるような気がします。レストランも同様です。どんなに素敵なお食事をいただいても、洗面所が汚かったり変な臭いがしたりすると、レストラン全体の印象も悪くなり、もう一度来たいと思わなくなってしまします。以前訪れたレストランは、自然食にこだわりをもっていて、使っている野菜はすべて有機野菜。生産者の方の写真まで載せていました。しかしそこの洗面所では、安い芳香剤の臭いがしていたのです。しかも見えるところに置かれていました。自然にそこまでこだわって、お店の雰囲気もとても素敵だったのに、最後に芳香剤の香りでは、それまでの素晴らしい印象が安っぽく感じてしまいます。

 「企業イメージ」という言葉があります。ここには、さまざまな要素が含まれると思いますが、企業の表の顔でもある職場の空間作りはとても大事です。隅々まで空間作りが施されている企業では、気持ちよく働けて、お客様に対してもよい印象をもってもらえるのではないでしょうか。つまり、良い印象の空間は、良い印象の人を作り出す要因にもなると私は考えています。

 最近の人材派遣会社の求人では、「きれいなオフィス」という文字をよく見かけます。それは、多くの人がきれいな空間にいたいということを望み、また、きれいなオフィスの企業は、気持ちよく働ける環境であるということに結びついているからではないでしょうか?

 数年前、デパートがお客様獲得のためにまず洗面所の改革を行いました。売り場など見えるところは、常日ごろからいろいろと考えられていますが、洗面所のような後ろの場所は、なかなか目が届きにくくなります。残念ながら男性のほうがどんな状態か知ることはできないのですが、客層のほとんどが女性というデパートでは、女性の洗面所の改革は大きな意味があったようです。ほんの少し、空間を変えるだけで売上にまで影響するということです。

 「空間の印象」は、その場すべてのイメージにもつながります。印象というと、すぐに人に対してのことを思い浮かべますが、このように空間に対する印象もとても重要なのです。

空間は普段意識しないものだからこそ、大切に考えていきたいところではないでしょうか。

 前回、第一印象が大切だということを書きました。今回は、人に対する印象について書いていきたいと思います。

 「人への印象を良くする」ということは、自分が相手にどうみせようかではなく、相手が自分のことをどう感じているかが重要になってきます。これは似ているようですが、主が、自分か相手かという大きな違いがあります。 つまり、自分がどんなに良いと思っても、相手に良いと思ってもらえなくては、よい印象を与えたことにはなりません。

 人は、何かの情報を得ようとするときに、五感を使って判断しています。通常、その中でも視覚が一番多く、80%の情報を視覚から得ているといわれています。

心理学の研究では、第一印象は、3~7秒で決まり、55%が顔の表情や身体的特徴で、38%が声の質や話し方・呼吸、残りの7%が話の内容であるといわれています。つまり、ほんの数秒、言葉を発するまでに第一印象は決定付けられてしまうのです。

 「人を見た目で判断するな」とよくいわれますが、つまりは、それだけ人は見た目で判断してしまうということになります。初対面の相手に与える印象は、会ってから5秒。見た目が勝負なのです。

 では、相手に良い印象を持ってもらうためには、どうしたらよいのでしょうか。 それは、TPOに合わせた身なりです。身なりには、服装・髪型・お化粧・姿勢・所作などあらゆる要素が含まれています。

 最近、このTPOに合わせた身なりができていない人を大変見かけます。たとえば、テレビなどでのお詫び記者会見などを行う場合、その人の服装によって受けての印象が変わってくることがあります。謝り手の身なりは、謝る相手に対する礼儀と考えられます。Tシャツにジーパンでは、どんなに精神誠意謝っていても、どこか本気が見えていない気がしませんか?

 また、最近は結婚式に、会社に行くのと変わらない普段の格好で参加している方がいます。「平服でお越しください」という言葉が書いてあったとしても、これは日本特有の表現で、裏には、正装でなくてもよいですよ。という意味があり、決して普段着を着て行ってよいということではありません。昔は、五つ紋、三つ紋、一つ紋、紋なしといったように、出かける場所によって着物の格がありました。それは、自分を高く見せるためではなく、相手への敬意を表して決められていたのです。結婚式というのは、相手にとって一生に一度の晴れ舞台です。お祝いの気持ちを表すのに、失礼のない身なりを整えていくのが、相手に対する礼儀というものです。

 また、外見的な身なり(服装や髪型)だけではなく、姿勢や所作も大変重要です。どんなに服装や髪型がきちんとしていても、猫背やうつむきがちだと、暗い印象を与えてしまいます。また、ふんぞり返ったり、あごを突き出したりしていたら、相手に威圧感を与えてしまいます。

 私はバレエを長年習っていますが、バレエダンサーは皆さんとても姿勢がよく、レッスン着でもとても素敵な印象を受けます。ぴんとのびた姿勢は、その人の魅力をさらに引き出してくれるような気がします。 所作に関しても同様です。ほんの少しでも気を使った姿はとても美しいものです。

 身なりを整え、姿勢よく相手の目を見て笑顔を絶やさず、思っているより半テンポ遅らせた動作をとる。私が初対面の方に会う時に意識していることです。着ていく服などは、相手の立場、年齢や合う場所、時間なども考え、前の日から準備するようにしています。

 面接などは、相手に良い印象を一瞬で持ってもらえるかが特に重要になります。もしかしたら、その瞬間に自分の人生が決まってしまうかもしれません。

 初めての人に会うのは、大変緊張するものです。少しでも最初に良い印象を持ってもらうためにも、まず相手の立場にたって、自分の身なりを整えてみてはいかがでしょうか?自分の身なりに自信が持てれば、相手にその気持ちが伝わり、よい印象を持ってもらえるのではないでしょうか?

第1話 「印象とは」

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 このたび縁あって、こちらにコラムを書かせていただくことになりました、アロマプロデューサーの石川愛美です。香りに興味を持つようになってから、様々な分野で香りが使われていることを知りました。テーマである「印象」は抽象的ではありますが、これがどのように香りを結びついていくのか、心理的な側面も含めて皆様に伝えていけたらと思っています。

さて、皆様私の写真を見ていただいてどのような印象をお持ちになられたでしょうか?

 「印象」とは、「強く感じて心に残ったもの。感銘。対象が人間の精神に与えるすべての効果。」と広辞苑では定義されています。これはとても漠然としたもので、人が受ける印象は人それぞれ異なります。

 私の写真を見て、好意的に思われた方もいれば、否定的に思われた方もいると思います。その感情が印象といえます。では写真を見て、「私」という人間を判断するのに、どれくらいの時間がかかったでしょうか?

 人が最初の印象=第一印象を抱くまでの時間は、心理学では、約3~7秒間といわれています。この「第一印象」は、強いイメージとして残り、その後もその印象の50%以上を占め続けるようです。つまり、その印象を変えるためには長い時間がかかったり、理解してもらおうと説明をしたりしなければならず、この「第一印象」というものはとても重要であるということとなります。

 私たち人間は、必ず社会という枠組みの中で生きています。人間は、社会の中で生まれ、生活をしています。家族という最少単位のものから、学校や会社、国といった集団や組織の中に必ず存在し、生活しているのです。そして個人の心の働きや行動は、この社会的環境に大きく影響を受けています。初めて受ける外部からの影響がそのものに対する印象となるのです。

 自分が相手に与える印象、相手が自分に与える印象。これは、人に限ったことではありません。場所や空間、集団、組織などに対しても、人は印象で判断しています。

 ではどうしたらよい印象を与えられるのでしょうか。次回からは、そのことについて、いろいろな側面から書いていきたいと思います。

 さて、ここまでお読みいただいて、私の最初の印象がかわりましたでしょうか。実際にお目にかからずに、私という人間を理解していただくのは大変難しいことだと思います。私のコラムを読むうちに、少しでも良い印象を与えられればと願っております。